パスクワの子羊〜Agnello Pasquale(アニェッロ パスクアーレ))
今週は復活祭週間のイタリアです。
復活祭について、詳しくはこちらから↓
イタリアでキリスト教のお祭りに欠かせないドルチェ
イタリア中には各地にキリスト教をベースとしたお祝い菓子がたくさんあって、中でもクリスマスと復活祭は山ほど!と言ってもいいほど、色々なお祝い郷土菓子があります。
代表的なものとしては、、、
<イタリア全土>
●コロンバ・・・鳩の形をした醗酵菓子、もともとはロンバルディア州のお菓子だけれど、現在はイタリア全土で復活祭の象徴のお菓子となっています。
●ウォーヴォ ディ パスクア・・・巨大な卵の形をしたチョコレート。中にソルプレーザと呼ばれる小さなオモチャが入っています。
<フリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州>
●グバーナ・・・木の実がたっぷりはいった詰め物が入ったスロヴェニア出身の醗酵菓子
●プレスニッツ・・・グバーナに似て否なる木の実が詰まったお菓子。
<カンパーニャ州>
●パスティエラ・・・茹でた麦とリコッタの詰め物が入ったタルト
<シチリア州>
●カッサータシチリアーナ・・・緑の帯で巻かれたシチリア名物のあのケーキは実は復活祭のお菓子
これはほんの一部で、まだまだ星の数ほどの復活祭のお菓子があるのですが、その中でも異彩を放っているのがシチリア州の「パスクアの羊」。
一体なぜ羊!?!?!?
今日は私が愛するこのお菓子、パスクアの羊ちゃんをご紹介します♪
民を守り、救う羊
復活祭のシンボルの一つでもある羊。
これはキリストがかつて生贄としてささげられていた「子羊」に例え、「神の子羊」と呼ばれていたことに由来します。
聖書では羊は「温厚で善良な動物」とされ、旧約聖書では羊は生贄としてささげられ、民を守り、救うものとされていました。
教会に行くとキリストと羊が一緒に描かれた絵や、羊のシンボルをよく見かけます。
これは羊がキリストを意味しているからなのです。
シチリアでなぜパスクアの子羊が生まれた?
羊がキリストを象徴していることはわかりましたが、これはシチリア州に限ったことではなく、キリスト教を信仰する国全部に言えることです。
それではなぜ、シチリアで「パスクアの子羊」が誕生したのでしょう?
その大きな理由は2つ。
1、シチリアは信仰心が厚い地域だから
2、シチリアはアーモンドの大生産地だから
シチリアは島で海に囲まれてるため、古くから地中海貿易の拠点として、様々な国に侵略されてきました。
色々な文化の影響を受けて独自のシチリア文化が生まれたのですが、民はいつでも貧困に悩まされ、信仰心があつくなっていったと言われています。
そこで、重要なお祭り復活祭にキリストの象徴である羊を象ったお菓子を作り、キリストの復活を祝うと共に、祈るような気持ちだったのでしょうか。
もう1つの理由は、シチリアがアーモンドの大セ産地だったから。
あの子羊ちゃんは、マジパンで作られています。
アーモンドが豊富にある土地だからこそ作れるお菓子ですよね!
黒羊もいる!?
私はシチリアで合計3件のパスティッチェリアで修業をしました。
一番上の写真は、エリチェにあるPasticceria Maria Grammatico(パスティッチェリア マリア グラマティコ)の子羊ちゃん達。
私がシチリア全土で一番かわいい!と思っているお気に入りの子羊です。
私のマジパン細工の師匠、Gaetano(ガエターノ)氏がひとつづつ、丁寧に顔を描いています。
簡単そうに見えて、これがまたなかなか難しい、、、(汗)
一番最初の修行先だったモディカのBonajuto(ボナユート)で出会ったのは、なんと黒い羊!
実はボナユート、最初の修行先だったので、修行している最中は、
「へー、黒羊もいるのね!」
くらいな感じで思っていたのですが、、、その後、黒羊に出会ったことはほとんどなく。
レアものだったわけです(笑)
確かに羊の群れを見れば、中には黒い羊だっているわけなので、不思議はないですけれどね。
お祝い事なのでやはり、白>黒なのでしょう。
復活祭の子羊はどうやって象る?
さて、この羊ちゃん達、どうやって形を作っているのでしょうか?
正解は、、、
羊の型がある
シチリアの菓子道具屋さんには、復活祭になると大小さまざまな羊の型が並びます。
超ミニから巨大な羊まで、サイズは色々。
大体、どれくらいのマジパンを詰めればよいかわかるように、グラム数が記載されています。
一番小さいので25g、大きいものは1kg以上のものもあります。
型はこんな感じ。
きれいに象るのはこれまたなかなか難しく。
マリアグラマティコはちょうど復活祭の時期に働いていたので、私も挑戦させてもらいましたが、なかなか師匠のようにきれいには象れず。
なかなか苦労しました。
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冒頭で「イタリアにはたくさんの復活祭のお菓子がある」と書きましたが、拙書「イタリア菓子図鑑」(誠文堂新光社)では、107種のイタリア伝統菓子をご紹介しています。
すべてのお菓子にストーリーとレシピが掲載されています。
食べるだけでも美味しいですが、その背景や歴史、ストーリーが分かると更に楽しめるイタリア菓子。
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